遺言書は一般的には普通方式で、自筆証書遺言或いは公正証書遺言で
書かれることが多いですが、それぞれにメリット、デメリットがあり、選択に
迷われると思います。ここではそれぞれの遺言書の書き方、気になる
公正証書遺言に掛る手数料について説明します。

・自筆証書遺言の書き方

準備するもの:

①消せないボールペン、万年筆、サインペンなど改ざんされにくい
 筆記用具。遺言書の記載内容が法律上の要件を満たしておれば鉛筆でもOKですが
 改ざん防止の為にお勧めできません
②用紙:自由です。縦書き、横書きどちらでも可
③印鑑:シャチハタや百円ショップの認印でも法律上はOKですが、インキの劣化や
 のちの改ざんのリスクや紛争を避ける為には、印鑑登録した実印がお勧めです。

書き方:

〇ご自分が遺言書全文を書き、日付、氏名を記載し、印鑑を押して作成します。
〇財産の目録は遺言書に自筆しても、別の用紙を使ってパソコンで目録を作成し、
 添付する形でもよいです。
〇本文と目録は一体性を持たせる必要があるので、ホッチキスで綴じたり契印をするのが
 望ましいとされています。
〇遺言書は何度も書き直してもいいです。その場合、日付の新しい遺言書が有効に
 なります。
〇遺言者が保管します。方法は遺言者の選択によります。

・公正証書遺言

準備:

①公証人と予め遺言内容(誰に、何を相続する、遺言執行者など)を擦り合わせする。
 公証人は遺言者の意思能力や遺言内容の実現可能性を判断します。
②必要書類の入手:遺言者や財産の特定に使用。遺言者本人の身分証明書や相続人の
 戸籍謄本など。
③証人2名の選定と依頼:公正証書遺言作成時に立ち会ってもらう証人の選定と依頼を
 しておきます。但し、遺言書の公正性を保つ為に、証人には欠格事由があり、それに
 該当する人は証人になれません。適切な公証人がいなければ公証役場で証人を紹介して
 もらうことができます(別途費用が必要)。

書き方:

①公証役場に遺言者が出向く、或いは公証人が遺言者の元に出向き、証人2名の
 立ち会いの元で、予め決めておいた遺言内容を遺言者が公証人に口頭で伝え、
 公証人が遺言書を作成し、それを読み上げます。
②公証人が読み上げた内容を遺言者と証人が確認し、間違い無ければ其々が署名、捺印
(実印)をします。
③遺言書の正本と謄本が作成され、遺言者には謄本が交付され、正本は公証役場が
 保管します。

費用について:

 公証証書遺言作成に掛る費用は、①公証役場に払う公証人手数料(法定)、②証人への
謝礼・日当・報酬、③必要書類取得費用(実費)、④専門家への報酬(弁護士や司法書士、
行政書士へ依頼した場合)が掛ります。

①公証人手数料:これは法律で決まっており、2025年12月現在の手数料は次の
 とおりです。
    遺言する財産の価額     基本手数料
      100万円迄        5,000円
      200万円迄        7,000円
      500万円迄        13,000円
       1,000万円迄        20,000円
      3,000万円迄        26,000円
     5,000万円迄       33,000円
        1億円迄       49,000円

 上記に加え、1億円を超える財産の部分には以下の加算があります。

     3億円迄    5,000万円毎に15,000円
     10億円迄    5,000万円毎に13,000円
     10億円超    5,000万円毎に 9,000円

(引用:公証人手数料令第9条別表)

例えば遺言者が妻に1億2,000万円、子に8,000万円相続させる遺言内容の場合の手数料は、

     基本手数料        加算額       手数料合計
(妻)   49,000円        15,000円       64,000円
(子)   49,000円          0円         49,000円
      合計                    113,000円

 また、公証人に出張して貰うと、日当や交通費、報酬が別に掛ります。

②証人費用:証人を誰に頼むかで相場が違います。親族の場合は謝礼として、数千円程度、
 公証役場に依頼すると日当として10,000円~15,000円程度、専門家への依頼では報酬の
 一部として10,000~30,000円程度が必要です。

③書類取得費用: 取得する書類の種類や枚数によりますが、数千円が必要です。

④専門家への報酬:遺言書の内容作成から公証役場との事前の打ち合わせ、書類収集など
 の業務を依頼する場合は上記の実費とは別に報酬が必要です。詳しくは依頼する
 専門家に事前にご相談されることをお勧めします。

・どちらの遺言書を選ぶべきか?

 それぞれにメリット、デメリットがありますが、遺言者の希望とおりに遺言執行させるには
公正証書遺言がより確実です。遺言書に必要な要件を公証人が予め確認したうえで
遺言書を作成するので法的に有効な遺言書を作成しておけますので、相続発生の際に遺言書の有効性について
相続人の間でもめる可能性は少なくなります。ただ費用も掛りますし、自筆証書でも正しく作成しておけば
有効性も問題になることはありません。

 行政書士は、遺産相続業務の専門家として、自筆証書遺言書の作成、公正証書遺言書
作成の際の公証人との打ち合わせや必要書類取得、遺言執行の受託など遺言書に関する
あらゆるご相談を承ります。

行政書士 西川晃敏事務所(開業準備中)